『2台の彫刻機械』
デモンストレーション当日、会場には彫刻機械が2台設置されました。
見学の方達の席も用意され、このデモンスタオレーションをするために
力を貸してくれたカンボジア在住の日本人の方、JICA職員の方、シニアボランティア
の方達など大勢の方が見学に来られました。
会場には日本から来た社長である職人の方々の顔写真と会社の製品写真を合わせた
パネルが貼られまずは自己紹介から。
そして、今回の為に制作された英語とクメール語に翻訳されたテキストが配られ、
最初に、機械彫刻機でアクリルの枡にグラフィックを彫刻する映像を流し、これから
この機械を使う人たちに、この機械がどのように動き、何のためにあるのかを
まずは理解してもらう事からのスタートでした。
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『上手にできなくてOK。それがものづくりには必要な過程』
デモンストレーションをするにあたって、生徒たちが技術を身につけたいと
興味づける必要があります。
そこで、まずは参加した全員の名前の名札を彫ることにいたしました。
最初は数名の人に教えて、次の映像に行く予定でしたが、
参加してくれた女性達、子供達の真剣な眼差しと日本から来た人たちの彫刻への
スイッチがONとなり、急遽、そのままの盛り上がりで、彫刻機械の1台は名前彫り用、
もう1台は原版づくりという予定とは違う流れでデモンストレーションを
進めていくことになりました。
計画通りよりは、その場の雰囲気で臨機応変に変えていくことの方が
デモンストレーションに関わった方達の印象に残るのではと思います。
彫刻をするのに基本となる原版作りを手彫りでできる72歳の職人がいて、
そのやり方を教え、前編で紹介した13歳の男の子が原版作りをやってみたいと
手を上げます。
初めてですから上手くいく訳はないのですが、13歳の少年の彫った原盤を使って
72歳の職人が彫刻した時に
「上手にできなくてOK。上手く彫れなかった原盤を使って彫刻すると、
やはり彫刻もガタガタにできあがる。これを経験する事が大切。」
という言葉がものづくりの本質を示していると実感した瞬間でした。
自分で工夫して上手く彫れるようになるためには出来ない自分を実感するのも、
必要な過程だという事です。
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2台の彫刻機の周りには目を輝かせたカンボジア人の輪ができ熱気あふれる
デモンストレーション会場。
名前を彫るためにの機械にはカンボジア人の通訳がつきっきりでケア、
一方の原版づくりは72歳の職人が、すべて日本語で教えているのですが、
どちらもカンボジアの人たちにしっかり伝わっているのがおもしろい現象でした。
言葉を超えた技術伝達ができたのは、教えるほうも学ぶ方も真剣そのものの
雰囲気をうまく取り入れた結果でした。
気が付いたら、通訳をしていた女性も機械を扱いながら自分の名札を彫り、
熱気にあふれた6時間になりました。
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